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大槌便り 第2章:人のもつ力

 台風の影響か、涼しいというよりもむしろ冷え込んで、朝方は14度ぐらいの気候でした。23日には、遠野市で震度5弱を観測する余震がありました。改めて自然の力に翻弄されることを実感しました。

 前回同様、盛岡市内の若者チャレンジ合宿所で1泊し、早朝に大槌町に向かいました。炊き出しは、前回同様焼き魚をメインに、汁物はサポステで豚汁と決定し、下ごしらえに入りました。前回4日に「次回は何を食べたいですか?」と聞いて歩くと、「今回と同じでいい」という声が多く聞かれました。「魚は毎日食べていたんだから・・・」、「おいしかたったよ」といわれました。魚を持って来るのが使命のように感じられました。また喜んでもらいたい、そんな気持ちでいっぱいでした。

 今回は、プロのおじさんが仕込みから協力してくれました。「塩ふりして、27時間かけてゆっくり解凍し、味をしみこませるんだよ。」そういうものなのかと居合わせた方々は感心し、奥深い世界を知りました。今回はとてもそんな時間はないけれど、手間暇かけた焼き魚を食べてもらいたい、また自分も食べてみたいなと思いました。プロのおじさんだけではなく、顔なじみの方が増えたように感じました。自然に和ができ、話も弾みました。サポステのメンバーと今回初参加の太田、阿部、山田さんが野菜を刻み、近づくハエと格闘しながらの作業でした。

 今回、大槌町出身の歌手佐藤ひろ美さんが、町を訪れる日程と重なり、ご一緒することになりました。ひろ美さんの事務所が渋谷区内にあることがご縁となりました。

 午前中には劇団四季の方々が訪れ、歌を披露することになっていました。多くの方々が暮らしていた体育館も役割を終えて、新たに劇団四季を見ようとする方々が集まっていました。災害本部長の佐藤稲満さんの娘さんとひろ美さんが同級生という事もあってか、当初午後に予定していたひろ美さんの歌の披露を、「多くの人に聞いてもらえる時がいい」ということで、劇団四季に引き続き行う事になりました。

 ひろ美さんの時間は「歌」と「語り」でした。行方不明になっている父親のこと、大槌町への想い、自分の想いを語りかけ、80才のお婆ちゃんがひろ美さんに声をかけました。同じ悲しみ、苦難に遭遇した者にしかわからない感情が、居合わせた方々の共感を呼んでいました。思わず涙が溢れ、握手を求め、抱き合い、肩をたたき合う、そんな光景が広がっていました。ひろ美さんから「想いはあっても地元の人とどう関わっていけばいいかわからなかったから、いい機会になりました。」といっていただいきました。

 私たちにとっても大切な出会い、人のもつ力を感じました。

佐藤ひろ美さん(岩手県大槌町出身シンガー)
*ピアサポとの関係
安渡小学校での高校生グループとのかかわりを通じて、大槌町での活動を決めた私たち。検索サイトで「大槌町」を調べると「がんぱぺっし 大槌」という大槌町復興支援サイトに出会いました。さらにどんな方が立ち上げたのか調べていくと・・・、なんと事務所が渋谷区に。
同じ渋谷区同士というご縁で、7月24日にミニライブ&トーク(今回の記事)を安渡小学校で行ってもらいました。私たちが大変お世話になった安渡小学校避難所の災害対策本部長の佐藤稲満さんの娘さんと同級生だったこともその時にお聞きしました。その後、赤い羽根「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」助成事業で「被災地で中高生の居場所をつくる実行委員会」の実行委員をお願いしています。

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ピアサポーター・ユースワーカー・現地調査担当
石川 隆博Profile

公開日:2011年8月23日